初めての牛丼屋体験 牛丼屋 牛屋(うしや)
「初めての牛丼屋体験 牛丼屋 牛屋(うしや):第一話」「異世界の店長がいる牛丼屋に入ってみた!:第二話」を動画で見る
目次(小説)
初めての牛丼屋、その名は牛屋
大学生活1年目ー。
希望していた学部の大学は全て落ち、それでも何とか希望に近い勉強が出来る大学をと、滑り止めに受けた大学から選びこの丑球磨経済大学に入学した。淡い希望を胸に、年間の授業の履修届けを作成したが、カリキュラムの相談にいったキャリアセンターにいったところで、耳を疑うような言葉を聞き絶望した。理想に描いていた華やかな大学生活と違い、現実はただよくわからない講義を受け続ける憂鬱な日々が続いていた。理想を失った俺の目には、映る景色が全て灰色に見えた。
牛丼屋『牛屋』と初めて出会う
そんな中、俺の生活に色を与えてくれたのが、牛丼屋『牛屋(うしや)』との出会いだった。ここでアルバイトとして働くことで、自分の運命は大きく変わることになる。初めての牛丼屋でのバイトは、俺に新しい視点を与えてくれた。
ただー・・・
その色はちょっと濃かった。
灰色の大学生活
10時間前ー
「あれ?もしかして松野君?」
3時限目の講義を待つ中、隣から聞いたことのある声がした。この大学に入学してから、誰かに声をかけられたのは初めてだ。
「僕だよ!中学一緒だった好屋!『こうや』だよ!卒業以来だから四年ぶり?ひさしぶり~♪また合えてうれしいよ!」
声の主は中学の時、同じクラスだった好屋。なぜか二回名乗った。記憶の底にかすかに残っているが違和感があった。その違和感は彼が背負っているバッグで納得がいった。どうやら彼はテニスの推薦入試でこの大学に来たらしい。つまり彼は二年生。一年の必須科目の『基礎経営学』を落とすほど、テニスに明け暮れた充実したキャンパスライフをおくれている。四年も経てば立派な陽キャラの出来上がりだ。
「え?松野君、この大学辞めるの?もったいない!結構この大学偏差値高いでしょ?暗い!暗すぎる!よし、再開を祝して飲みに行こう!」
拒否権を発動するまでもなく、強引に飲み会が決定する。これだから陽キャラは苦手である。金がないことを理由に、家飲みにしてくれたのはせめてもの救いだった。
早くて安い牛丼屋
飲み会場所は大学から近い、俺のアパートになった。家に入った途端、好屋はテレビの前に置いておいた旧式のゲーム機と対戦格闘ゲームのパッケージに目を輝かせた。なし崩し的に飲み会と言う名の、ゲーム大会が始まった。これだから陽キャラはーと思いつつ、正直なところ助かったと思う気持ちが強かった。
人と話をするのは苦手だ。正確には、人と話をする自分が嫌いだ。話だすと自分のことばかりベラベラ話つづけてしまう。相手の話も聞き出さなければと思うのだが、自分の意見ばかりが先走ってしまう。そして一人になった時に自己嫌悪に陥ってしまうのだ。
午前一時過ぎ。延々と続いたゲーム大会は、好屋の空腹と共に終わりを告げてくれた。幸い冷蔵庫の中には歯磨き粉しかない。これで、飲み会もお開きかと思ったがー
「よし!じゃあ、牛屋行こうぜ!あそこなら、まだやってるし。安いから金欠の松野君でも大丈夫!」
さらっとディスる陽キャラ。どうやら、駅前に『牛屋(うしや)』と呼ばれる、牛丼をメインにした店があるらしい。そこの牛丼屋でカレーも出しているらしく、カレー好きの俺としては気になるところだが・・・・はっきり言って外食は苦手だ。中学の時に家族で行ったファミレスが最後。その時、クラスの柄の悪い連中に絡まれたことがきっかけで足が遠のいていた。なので、飲食店自体に嫌悪感があった俺には、駅出てすぐに目に入るその店舗も、見えないものとして扱われていたらしい。
「え?牛丼屋初めてなの?牛屋は全国店舗だよ?うわ!なんか天然記念物みたいだね!」
さらにディスる陽キャラ。残念ながら、次に大学で声をかけられても彼に返事をすることはないだろう。そんなことを考えながら、夜道を歩いていると5分も待たずに牛屋に到着。いくら興味がなかったとはいえ、こんな近所にあるのに気づかなかった自分に少し残念な気持ちになった。気鬱な気持ちを押し殺して、初めて牛丼屋の店舗の中に足を踏み入れことに。そこにはー・・・・
何かすごいものが待っていた。
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