牛丼屋で口論してみた!(漫画 第4話)

ちょっと待てし!
ぶちゃるぞコラ!
お待ちください
蚊に喰われました
なるほどここで異世界ですか?

目次(小説)

  1. 牛丼屋で口論勃発
  2. 正しいクレーム対応?
  3. いざ異世界へ!?

牛丼屋で口論勃発

「ちょっと待てし!」

旧友の松野君が、牛丼屋で起きているクレーム客とのトラブルに首を突っ込んだ。

彼は僕の中学時代のクラスメートで、丑球磨経済大学に通う同友だ。当人は覚えていないかも知れないが、当時人見知りだった僕を唯一気にかけてくれたのが松野君で、テニス部に誘ってくれたのも彼だった。久しぶりに会ったのだが、あの頃のような明るさはなく、どこまでもテンションが低く、まるで立場が逆転してしまったかのように感じていた。

そう、この光景を目の当たりにするまでは。

「てっ!未だに宇宙人やらキノコやらだっちもねえもん見えてるし・・・きっとまだ酔ってる最中なんだろうけんど、人を怪我させるヤツ見過ごすほどよたってねえずら!」

だめだ。松野君。それ肝心なところが全然伝わんない。

彼が発しているのは『甲州弁』と呼ばれる山梨の方言だ。僕も上京したての頃、よくテニス部のチームメイトに「何言ってるかわからない」とツッコまれたのを思い出す。

因みにー

だっちもねえ→くだらない

よたってねえ→弱ってない

ーのような意味になる。

「誰だテメエ!格好つけて出て出てきやがって!何言ってるか全然わかんねえよ!」

ほらね。それに対してまた方言で返しているから、口論しているようで全然かみ合っていない。それにしても、よくあんな怖そうな人の相手をできるもんだ。

・・・

・・・・ーいや。松野君は昔からそうだった気がする。相手がガタイのいい不良でも、いつも竹刀持ってる体育教師にも、臆することなく平気でつっかかっていくタイプだった。そしていつもボロボロになるまで殴られてた・・・。

「変わらないな、松野君は」

僕は二人に気づかれないように、スマホの動画モードを起動した。

「お待ちください」

音もなく背後から現れた大きな手によって、僕の援護射撃は憚れてしまった。

正しいクレーム対応?

「お待ちください」

頭を流血で真っ赤に染めた宇宙人が、俺らの口論にわって入ってきた。俺には未だに固定された笑顔に見えているのだが、きっと悲痛な表情になっているに違いない。

「お騒がせしまして、大変申し訳ありません。どうやら蚊に喰われてしまったようで。」

どんなデカさの蚊だよ。心配させまいと言葉を得たんだのだろうが、3つある選択肢で絶対選ばないやつを持ってきたようだ。どくどくという擬音語が聞こえてきそうな程、血を流しながら店長は笑顔のまま言葉をつづけた。

「吉様、この度はご迷惑をお掛けしまして大変申し訳ありませんでした。二度とこのような事態が起きぬよう、再発防止に努めますので、またご来店いただけますと幸いです」

何だコレ?大人の・・・いや日本の嫌な側面を見せられたみたいだ。『お客様は神様』ってやつか?ダメだ。そんな時代錯誤の考えは。これは間違いなく『カスタマーハラスメント』だ。あろうことか、俺の怒りはそんな理不尽を受け入れてしまった被害者に向かってしまった。

いざ異世界へ!?

「てっ!えらい目合わされてんのに、謝る必要なんてどこにもねえじゃんけ!」

興奮すると次から次へと言葉が出てくるのだが、二人ともどこか頭に『?』が付いたような顔でこちらを見つめている。後から知ったが『えらい』は『つらい・苦しい』という意味なのだが、どうやらこれは方言らしく山梨県民以外には通じないらしい。

「うるせえ!この田舎野郎!何言ってるかよくわかんねえが、文句言ってるってのはわかるぞ!いい度胸だ!表出やがれ!」

さて、ここからはいつもパターンだ。正直言って俺は喧嘩は弱い。弱いというか人を殴るのが怖い。怒りで拳を握るも、振りかざすところで止まってしまい、結局ボコボコに殴られる。

でも、それでいい。いや、決して殴られるのが好きだからというわけではない。『間違っていたことを、絶対に見過ごしてはいけない』それは、ずっと昔に親友と交わした約束だから。

「上等ずら!とんで逃げるのも今の内・・・」

売り言葉にまた伝わらない買い言葉を返し、を出る途中だった。

目の前が真っ白になった。

強烈な光の後に遅れて、けたたましいクラクションの音が鼓膜につきささった。

大型トラックがガードレールを突き破り、店先数メートルの所まで来ていた。なるほど、今まで見えていた超常現象はこれの伏線だったわけですね。

松野謙信、異世界転生するようです。

©武誰応志 / USHIYA
オリジナルWeb漫画『牛屋の店長!』