牛屋に初めて入ってみた(漫画 第2話)
目次(小説)
ここは本当に牛丼屋?
プロレスラーのようにたくましい上腕二頭筋。きめ細かく細部まで鍛えられた肉体と反比例したかのような単純な造形の顔。宇宙人を彷彿させる口頭物の突起物。どんなハリウッド女優にも負けない、透き通った広い美肌。異世界の住人のような、この世界とは全く別の存在が、ごく普通に接客をしていた。
「俺たち来る途中、トラックにひかれなかったよな?」
まさか、あまりにも現状に不服を言っていたから、某なろう系のようにファンタジー世界に飛ばされてしまったのか?神様すみません。そういうのお腹いっぱいです。
「お?アニメトーク?僕、結構オタクだからまかせて!」
目の前の謎の生物に動揺する自分とは裏腹に、好屋はいたって普通に彼に食券をわたし席に着いた。
息を整え現状を把握する。
俺は生まれて初めて飲酒をし、若干の高揚があり足取りも若干おぼつかない。きっとこれは『酔っ払い』状態というやつなのかもしれない。よくドラマや漫画でみる、カーネ〇サンダースの置物に声をかけたり、薬局やのカエルとダンスするアレだ。自分分析は受験の時に十分やったから得意だ。
「悪い。ちょっと酒のせいで眩暈がしてて、ちょっと待ってて」
自分も席に着き、火照った目頭にお冷で冷やした手をあてる。隣で今期のアニメについてイキイキと話す好屋を無視して呼吸を整える。先程までの高揚や目頭の重みは大分おさまった。きっと、もうアルコールによる幻覚は見えないはずだ。
「よし!今度こそ!」
早い!安い!そしてー
「牛丼の並盛お待たせしましたー」
視界を塞いでいた手を開放し、眼前の世界を確認すると同時に、先程とは別の店員が牛丼を運んできた。
・・・
・・・・
・・・・・店員!?
先程とはうって変わって、細部まで作り込まれた顔の造形をもつ、全長20cmほどのキノコがカウンターテーブルに立っていた。
「うわあああああああああああああああ!」
俺は何年かぶりの絶叫をあげた。
「な!早くてビックリするだろ!俺も初めて来た時は驚いたけどさープフっ松野君驚きすぎで超ウケる♪」
違う!そっちじゃない!好屋のどや顔がいちいち腹が経つ。彼の反応を見ると、きっとこのキノコも普通の店員に見えているのだろう。
ダメだ。まだ酔いは全然冷めていないようだ。再び俺は、テーブルに視点を下ろし視界を塞いだ。目の前の牛丼の湯気も、再発した動悸と高揚のせいで、においさえ感じられなくなっていた。
二日酔いには『しじみの味噌汁』
「お連れの方、大丈夫ですか?酷く寄っていられるようですが?」
宇宙人のような店員から心配される声が聞こえる。見た目は宇宙人だが、ちゃんと気遣いできる人のようだ。まあ、宇宙人に見えているのは俺だけなのだろうが。
「酔っ払いなんで。気にしないでください。動画撮って素面になった時見せて、大笑いさせてもらうんで」
それに比べてなんだこの男は。それとも今どきの大学生はみんなこんなノリなのか?もうこれ以上、失態を見せて笑いものになるのはご免である。相変わらず目の前には、好屋以外は宇宙人とキノコにしか見えないが、動揺を隠してこのまま接することにした。
大丈夫。コソコソ動くキノコも、大嫌いな虫に比べたらなんて可愛らしいことか。大きく深呼吸して店内を見まわしてみた。テーブルも壁もキレイで清潔感ある内装で、どこもおかしい所など見当たらない。
そうだ。こんな所に宇宙人もキノコもいるはずがない。このまま食事して店を出るまで冷静さを保とう。
「二日酔いに効く、しじみのお味噌汁など追加でいかがでしょうか?」
▶マッスルキノコが現れた。
▶しじみの味噌汁の追加を推奨している
▶どうする?
【選択肢』
1.「ありがとうございます。いただきます。」
2.「いいえ。結構です。」
3.「うわああああああああああ」
ー・・・・・無理でした。
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